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2度目の聖夜は。
2008年12月19日 (金) | 編集 |
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去年の聖夜。
繋いだ手は温かくて。
だけど唯々緊張するばかりで。
踊り終わった後に2人で出かけた思い出も、
今振り返れば自分の言動の混乱加減がひどく情けなく思える。
だけどそれも大事な思い出で。
もうすぐあれから1年。
2度目の聖夜がやってくる。
「…ほんと去年はボク…何かわたわたしちゃったんよ。」
目を閉じるとその光景は鮮明に瞼の裏に浮かび上がり、
何だか可笑しくて自然と笑みが零れた。
2007年12月24日。日もすっかり暮れた午後7時。
クリスマスの装飾に彩られた街には多くの人が行き交う。
通り過ぎる人々の姿を眺めながら、
何処かそわそわと落ち着かない気持ちに戸惑いつつ、
人ごみの中に待ち人の姿を探す。
時間を気にして時計に目を落とし、辺りを見渡しては溜息一つ。
もやもやする形容し難い気持ちの原因は、はっきりとは分からない。
だけど、思い付く事は一つで…。
でもその先を考えるのは何故か躊躇われて、答を見出すには至らない。
「何かボク変なんよ…。何でかな?」
ぽつりと呟いても返ってくる言葉などなく、何度目の溜息をついた時だろうか。
見知った顔を遠くに見つけ、安堵の気持ちと少し苦い気持ちを飲み込んでボクは小さく手を振った。

それは夕方掛かってきた電話での会話から始まった。
既に夢見心地でベッドの上に寝転がっていたボクは、着信を告げる携帯電話の音で目を覚ました。
もぞもぞと動きつつ、近くに置いたはずの携帯電話を手探りしていると、
もなかがストラップを銜えて手元へと携帯を引きずってくる。
「あ、ありがとうなんよ。」
少し不機嫌そうな表情のもなかの頭をそっと撫でてから携帯電話に手を伸ばす。
表示された電話の主の名前に珍しいと思いつつ、慌てて通話ボタンを押す。
「もしもし…、灰那ちゃん、こんばんはなんよ。どうかしたんよ?」
目を擦りつつ電話に出ると聞き慣れた声が返ってくる。
「夜分にすみません。ちょっとお願いしたいことがあるんですが、今から良いですか?」
滅多に人を頼る事のない人物からの言葉に、一瞬耳を疑うが断る要素はどこにもない。
普段はこちらが迷惑を掛けてばかりなので申し訳ないという気持ちがあるだけに、
二つ返事で了解の意を伝える。
「かまわへんのよ。お願い事って何なんよ?」
「え、えーと、その贈り物を…探してるんですが、私だとよく分からないので、朔に選んで欲しいんです。」
予想外の言葉に驚きつつも、一度は了承した事。
何故自分がこんなに動揺したのかも分からないけれど、相槌を打ちながら返事をする。
「あ、うん。別に良いんよ?」
贈り物…と言うからには誰かに渡すプレゼントだろう。
誰に…?という言葉が不意に頭に浮かんだが、言葉にならずに意識の片隅へと消えていく。
「それじゃあ、急で申し訳ないんですが、夜の7時ごろにお願いできますか?そうですね。
街中に大きな木があるので、そこで待ってて下さい。」
「あ、う、うん。分かったんよ。」
「それじゃあ、よろしくお願いしますね。では後で。」
電話が切れた後も暫く呆然とツーツーと言う音に耳を傾けていたボクは、もなかの鳴き声で我に帰る。
時計を見ると今は17時。
待ち合わせまでは2時間あるとしても、こんな起き抜けの格好で街中を歩くのはみっともない。
慌てて身支度をして、玄関へと駆け出す。
「いってきますなんよー!」
玄関の戸を開いて声を掛ければ、リビングから聖雪ちゃんと円ちゃんが顔を出して手を振る。
もなかも冬の寒空の下を出歩くのは嫌らしく、玄関先で立ち止まり、ゆらゆらと尻尾を揺らしてお見送り。
2人と1匹に見送られ、どことなく落ち着かない気持ちを押し込めて、
ボクは待ち合わせ場所に足を向けた。

「こんばんはなんよ。え、ええと、それじゃあ探しに行こうなんよ。どんなのが良いんかな?」
待ち合わせ時間ぴったりにやってきた灰那ちゃんへ挨拶して、そそくさと買い物へと促す。
誰にあげるのか、何となく気になるけれど…。
余計な詮索をして、不快な思いをさせるのは嫌。
ならば、早く贈り物を選んで、用事を済ませてしまいたい。
もやもやする気持ちは溢れ出さないように蓋をして、探す事に集中しようとぎゅっと手を握り締める。
自分に頼むと言うことはきっと送る相手は女の子だろうと予想はしていたけれど、
「朔くらいの女の子が喜びそうな物なら…。私にはさっぱり分からないので、よろしくお願いしますね。」
頭を下げられて、目の前にしてその言葉を聞いて、もやもやと得体の知れない気持ちはますます膨らむ。
それを振り払うように更に手に力を込めて、いつも通りに話を続ける。
けれど、何故か灰那ちゃんの姿を直視出来ず、視線が定まらない。
「了解なんよ。じゃあ色んなお店入って探そうなんよ。」
それを必死で誤魔化して、目に留まる店へと足早に向かう。
洋服やら、雑貨やら、色々な店を回っては探し、また違う店に入り。
それを何度も繰り返す。
けれど、これが良いと思える物は見つからない。
誰かに贈る物となると、どうしても慎重になって、自分が選んだ物で相手の人が喜んでくれるのかも不安で、これでもない、あれでもないと頭を抱える。
そんな自分の姿に呆れたのか、隣で眺めていた灰那ちゃんが口を開く。
「朔が綺麗だ、可愛いと思うもので良いんですよ。難しく考えないで。」
そうは言われても、贈り物。
頼まれたからには、ボクにも責任がある。
「…でも。」
と続けようとした言葉は灰那ちゃんに遮られる。
「良いんですよ、朔が選ぶ物なら大丈夫だと思って朔に頼んだのですから…朔が欲しいと思う物で大丈夫なんです。」
と、頭を優しく撫でられて、緊張や不安や、もやもやした気持ちがすっと引いていく。
そして、何件目かに立ち寄ったちょっと古い装飾品を扱うお店。
棚に並べられた一つ一つのアクセサリーはどれも綺麗で可愛くて目を惹かれる。
灯りに照らされて輝く石や、金銀が放つ優しい光に心が踊る。
「わー綺麗なんよ。」
きらきら光る装飾の数々に目を奪われつつ、その中から一つを手に取る。
月を象ったチャームと猫のチャームがついた銀細工のブレスレット。
揺らす度に、猫が月にじゃれつくように見える。
所々にあしらわれた藍玉もが光を受けてきらきらと輝く様子がとても綺麗。
「何か良い物ありましたか?」
灰那ちゃんに手元を覗き込まれて、じっと眺めていたブレスレットを差し出す。
「これとか、どうかな?可愛いんよ。」
「じゃあ、それにしましょう。」
すんなりと灰那ちゃんは頷くと、ブレスレットを手にとって、
「じゃあ買ってきますね。」とレジへと向かう。
悩む間もなく即決した事に驚きつつも、
レジへと向かう灰那ちゃんの背を見つめて、何となく寂しい様な、悲しい様な気持ちが込み上げて。
姿を眺めているのが苦しくなって他の商品に目を向ける。
考えちゃいけない、余計なことは考えちゃいけない。
頭の中に浮かぶ光景を振り落とそうと軽く首を振って、深呼吸した時。
「どうしました?」
いつの間にかレジから戻ってきていたのか、目の前には灰那ちゃんの姿。
そしてその手の中には、先ほど購入した筈のブレスレット未包装のまま乗せられている。
「…?あれ、包んで貰わなかったんよ。」
「あ、…ええ、不要でしたので。」
「そ、そうなんよ?」
何だろう…ラッピングが気に食わなかったのだろうか。
首を傾げつつも、目的は達成されたので店を後にした。

しばらく道なりに歩いていくと、灰那ちゃんが急に立ち止まって振り返る。
自分の腕をそっと掴むと、手に持っていたブレスレットをボクの手に通した。
「え、あ、あれ?」
事態が飲み込めず、暫くブレスレットと灰那ちゃんの顔を交互に眺める。
「あ、あの、ど、どういう…。」
続けようとした言葉は、
「…メリークリスマス。」
その一言と、急に手を引いて歩き出した灰那ちゃんによって胸の内に押し止められる。
軽く引っ張られて、慌てて歩き出すと、その振動で手首に通したブレスレットがしゃらしゃらと音を立てる。
それがとても嬉しくて、幸せで、自然と頬が緩む。

周りには煌くイルミネーション。
待ち合わせしていた時も、お店を回っていた時も、気付かなかったけど。
視線を上げれば、きらきらと彩られた光景が目に飛び込む。
「わー、綺麗なんよ。」
優しい光に溢れた街並みに、沈んでいた気持ちも、もやもやしていた気持ちも晴れて。
でも、繋いだ手から伝わる温もりに、いつもより心臓の音は少し大きい。
しっかりと握られた手に、ありがとうの気持ちを込めて、強く握り返す。
言葉には出来ないけど、それでもきっと伝わっていると願いたい。
短いはずの帰り道。
だけど、時間も、道のりも、いつもより長く思えて。
ボクは唯々、嬉しくて。
いつの間にか降り出した雪にも気づかずに。
傍にある幸せを、胸の内にそっと仕舞い込んだ。
クリスマス
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