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秋の楽しみ。
2007年10月05日 (金) | 編集 |
らぶ
朔が綺麗に片付けられた部屋で、
嬉しそうに冷蔵庫を覗き込んでいる。
姉とその友人と一緒に暮らすのだと、
荷物を少しずつ新しい家に移動させて、
部屋の中には最低限の荷物しか残っていない。
季節はすっかり秋に変わり、最近はもうすぐ運動会があると意気込んでいた気がする。
そんな朔が嬉しそうにしている理由は、昨晩貰ってきた秋刀魚だ。
…いや、実際は自分にくれたのだが。
3尾あるうちの内訳は、朔が一尾で自分が二尾の筈なのだが…。
……。
じっと背中を見つめていると、視線に気づいたのか朔がこちらを振り返る。
手にはパックに入った秋刀魚。
「……、ちゃ、ちゃんともなかに2匹…あげるんよ。」
やや視線を逸らしながら答える朔を見て、自然と溜息が漏れた。

台所で網を火に掛けて、
朔が秋刀魚を焼き始める。
仄かに漂う秋刀魚の香りに、
ついつい涎が出そうになるのを堪えながら、唯待つ。
秋は良い。美味しい魚が多い。
そんなことをぼんやりと考えていると、
「もなかーご飯出来たんよ!」
と朔が声を掛ける。
丁寧に身を解してくれた秋刀魚が目の前に差し出される。
ちゃんと自分の分には塩を掛けずに焼いてくれていてほっとする。
「まだ熱いから気をつけるんよ。」
とぱたぱたと内輪で仰ぎながら笑う朔。
嬉しそうに楽しそうに笑っているのに、
どこか違和感を覚えて、様子を眺めているとぽつりと朔が呟く。
「…もなか、しばらく向こうのお家で留守番出来るかな?
 聖雪ちゃんも円ちゃんもいるし、二人とも優しいから面倒見てくれると思うんよ。」
ちゃんとお願いもしていくからと続けた声に、
一瞬耳を疑う。
「うん、そろそろ良いかな。はい、もう食べても良いんよ。」
何事もなかったように、朔は秋刀魚の入った器を差し出すと、
自分で食べる分の秋刀魚を焼き始める。
……。
腑に落ちない気持ちで一声泣くと、
朔がこちらを見て笑う。
「あ、まだ先の事なんよ。うん、葉っぱが赤く染まる頃かな…。
 きっと、あそこの紅葉綺麗やから…。
 ちょっとお家に戻ってみようと思うんよ。」
ただそれだけと笑って、焼き上げた秋刀魚に大根おろしを掛けて、
お茶碗にご飯を盛る。
何の心境の変化があったのか。
それは考えても分からない事だが…。
幸せそうに秋刀魚とご飯を頬張る朔に、冷めちゃうんよと促され…。
良い具合に冷めた秋刀魚を一口。
「すごく美味しいんよー。」
……。
その一言に唯頷いて、今は秋刀魚の味を噛み締める。
木々が赤く染まる頃、それはきっともうすぐのこと。
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